1200MHz帯プリアンプ「LNA−BPF1200」シリーズの製作においての
注意点を記載します。
他のプリアンプも基本的には同じですので、よろしければ一読してください。
プリアンプと言っても、これは一般的な高周波増幅回路と同じです。
まずは、高周波回路の基本的な注意をして製作して頂ければ特に問題はありません。
いずれにしても、この基板は高周波回路が理解できる、中級者、上級者向けとなります。
すでに高周波回路を理解できている方は、読まなくても、ご存知のことも多いと思いますが、
初心者向けに、注意点を記載したいと思います。
まず、パーツ実装済み基板を例として記載したいと思います。

パーツ実装済み基板にはGaAsFETが付いていません。
推奨はFHX35LGですが、それ以外にMGF1302、FHX76LP、等々
LNAに使われるGaAsFETなら、大体は使用できます。
(GaAsFETによって多少調整が必要)

FHX35LG
GaAsFETを慎重に取り付けてください。
静電気に弱いので、特に冬場は注意してください。
安易にGaAsFETに手で触れると、静電気で簡単に壊れてしまいます。
部屋の金属部分(窓枠など)に触れて、放電してから作業しましょう。
ピンセット、ハンダこてを使う場合も、静電気に注意してください。
作業する机に静電気防止マットを敷いて、リストバンドを使い作業すると最適です。
冬場などは、部屋に加湿器を使って湿度を上げるのも良いでしょう。
濡れたタオルを吊り下げても、多少の効果が有ります。
また、GaAsFETは熱にも弱いので30Wクラスのこてと低温ハンダをお勧めします。
ソースからハンダすると良いと思います。
JP位置は、パーツ実装済み基板には、MMICが付いていますので、今の位置でご使用ください。
GaAsFETを付けたら、基板は必ずシールドケースに入れてください。
専用ケースとSMAコネクターの使用をお勧めします。
専用ケースより基板がほんの少し大きいことがあります。
丁度のサイズになるように、ほんの少し基板の周囲を紙やすり等で削ってください。
基板は薄く弱いので、基板に無理な力が加わると、実装しているチップ部品にクラックが
入って、故障することがありますので、注意してください。
金属ケースにはネジで止めてください。
本当に、細心の注意をして作業してください。
専用ケースには貫通コンデンサーが有りますので、そこに電源線をつなげて下さい。
基板はマイクロストリップラインになっていますので、インピーダンスが乱れないようにしてください。
コネクターの中心ピンがチップコンに当たらない様に、長い場合は必要に応じてカットしてください。

SMA−R2
安易に同軸を二股に撚って付けたりすると、大幅に性能が劣化しますので、もし同軸を直接使う場合は、テフロン同軸をハンダメッキするか、セミフレキ、セミリジッド(2mm程度の太さ)をお使いください。
調整はコイルとトリマー(BPF部)とVR(バイアス)を動かして、最良の位置を探してください。
場合によってはコイル幅の調整とオープンスタブ等も使ってください。
トリマーはセラミックドライバーを使うと、金属の影響を受けないので便利です。
セラミックトリマーですが、セラミックドライバーを使用して調整します。
メーカーによっては、マイナスの薄いのが無いので、セラミックドライバーの先を耐水ペーパーで削って使用します。
それ以外には、アクリル棒を薄く削って使う方法もあります。
セラミックトリマーを金属ドライバーで調整すると、金属の影響を受けて上手く調整できないので、非金属のドライバーを使用してください。
ネットワークアナライザー、またはスペアナで調整することをお勧めしますが、
無い場合は、無線機に接続して弱い電波で調整してください。(絶対に送信しないこと)
無線機を使う場合は、ノイズ・ジェネレーターを使うと、受信音で調整できます。

(これはネットアナで5700MHz帯のプリアンプを調整した画面です。)
セラミックトリマー等は何度も回すと壊れますので、注意してください。
ネットアナ、スペアナで調整する場合は、ゲインのピークを少し低めの周波数(1280MHz付近)に調整すると、NFが良くなります。
バイアス電圧、トリマー、コイル、を順に繰り返し調整して、最良点を見つけてください。
ネットアナ、スペアナ等で調整するときの入力レベルは−50dBm以下にしてください。
ケースの蓋を閉めたときに、発振していないか再確認してください。
蓋を閉めたときに、プリアンプの特性が大きく変化する場合は、コイルの幅を調整したり
回路上にオープンスタブを置いて、再調整してください。
回路のマッチングが良くない場合に起こることがあります。
なるべくゲインが上がる方向に調整をすると、NFも良くなります。
直下プリアンプ、卓上プリアンプとして使用する場合リレーは必ず同軸リレーを使用して、
1200MHz帯でアイソレーションが40dB以上有る同軸リレーをお使いください。
(詳しくはリレーメーカーにお問い合わせください)
これは、スルー回路に10W通過したときに、漏れ電波が1mW以下にするためです。
10W=40dBm 1mW=0dBm (近似値)
オムロンのG6Y−1はでも性能的には大丈夫ですが、メーカーの指示通りの基板を使わないとアイソレーションは悪化しますので注意してください。
中古でよいので、SMAタイプの同軸リレーをお勧めします。
大抵、このタイプでしたらアイソレーションは40dB以上有ります。

同軸リレーは2個必要になります。また接続(内部配線)の為にSMAP付きの同軸ケーブルも必要です。
プリアンプは電源が入っていなくても、過入力があると壊れます。
1mW以上を入力すると、場合によっては一瞬で壊れることがあります。
必要に応じて、リレーの遅延回路とプリアンプの保護ダイオードを設置してください。
保護ダイオードはサージ対策にも有効です。(リミッターダイオード)
設置場所は、入出力の端子部分です。
センターピンとGND間にダイオードをアンチパラレルに挿入します。
保護ダイオードを挿入すると、GaAsFETの前に容量成分が多くなり、
パラメーターが変化します。その為にダイオードをつけた状態で再調整してください。
ダイオードは、端子間容量が少ない製品の
高周波用ショットキーバリアダイオードをお勧めします。
推奨は1SS99、1SS97、1SS315、1SS295等です。
もちろん、高周波用リミッターダイオードを使えば最適です。

1SS295高周波用ショットキーバリアダイオード

1SS99高周波用ショットキーバリアダイオード
しかし、高周波用でないダイオードを使うと、プリアンプは動作しなくなります。
(ダイオードの端子間容量が大きいと、高周波回路的にはショート状態になります)
無線機のアクセサリー端子のSEND(PTT)を直接使っても、リレーの動作前に
送信電波がプリアンプに到達するので、注意が必要です。
(ケンウッドのTS2000にはPTTの遅延設定があります)
それ以外の機種では遅延回路を組まれることをお勧めします。
プリアンプ+遅延回路で検索してみてください。
遅延回路の動作
1.PTTを押す
2.同軸リレーがスルーに切り替わり、プリアンプがOFFになる
3.無線機が送信を始める。
プリアンプをケースに入れた後は、同軸の接続ですが、必ずN型コネクターを使用して
ください。
M型コネクターは1200MHz帯では損失が大きいので、プリアンプの性能が劣化
してしまいます。もちろん送信電力も減ってしまいます。
同軸ケーブルもFBタイプかSFAタイプで、コネクターはN型にしましょう。
同軸ケーブルが20m以上必要な場合は、10D以上の太さのケーブルをお勧めします。
10D−SFA、12D−SFA、等がお勧めです。
1200MHz帯では発泡系の太いケーブルを使いましょう。
(コネクターは高周波性能的にはSMA、TNCでも良いのですが、太いケーブルが使えないので、N型しか選択肢がありません。)
プリアンプ設置後の一般的な注意プリアンプを設置して使う場合、他のアンテナであっても、動作中に送信しないでください。
周波数が違っても、強力な電力がプリアンプに入り込み、壊れることが有ります。
同様に、マルチバンドアンテナでの他バンドの送信、デュプレクサー等で他のアンテナと共用するのは止めましょう。
やはり、漏れ電波(電力)がプリアンプに入り込み、壊れることが有ります。
特にデュプレクサーのアイソレーションは設置状況で十分な値が取れないことが有ります。
プリアンプ動作中に安易にアンテナに触ると、人体の静電気でプリアンプが壊れることが有りますので、注意してください。
プリアンプ動作中には、空S(カラエス)は5近く振ります。これで正常です。
どんなにNFが良くても、必ず空Sは必ず振ります。
空S:電波を受信しなくても、無線機のSメーターが振れる事
これは、プリアンプのノイズでだけではなく、空中に有る雑音も増幅するためです。
(熱雑音、都市雑音、等々)
但し、目的の電波は、より良く聞こえます。
S/Nは大幅に向上し、弱い電波も良く聞こえるようになります。
以前も記載しましたが、
・プリアンプは極力アンテナの近くに設置する。
・アンテナからプリアンプまでの同軸はなるべく低損失の同軸を使う。
・アンテナは、なるべくゲインと指向性が良いものを使う。これが、肝心です!